近年、海外旅行好きの間ではイランへの注目が高まっています。イランへ旅行した人々は口を揃えて、「あそこは本当に良いところだよ」と言います。
何故でしょうか?
一方で、イランに対して「治安が悪そう」、「イスラム教の国って大丈夫なの?」といった先入観から、旅行しようか悩んでいる人もいると思います。
この記事では、2019年11月に三週間かけてイラン一人旅をした私の経験をもとに、皆さんが抱えているであろう7つの疑問にお答えします。
イランに旅行したいけど迷っている人は、是非読んでみてください。この記事一つで、イラン旅行のハードルがグッと下がります。
1. 査証(ビザ)が面倒って本当なの?
現在、イランに入国するためには査証(以下、ビザ)が必要です。
申請取得方法は他国と大差なく簡単ですが、イラン渡航歴があることで不都合が生じる場合があります。
観光ビザ(e-VISA)
事前にイラン大使館で申請取得するタイプのビザです。こちらは30日間滞在可能で、駐日イラン大使館の場合、申請してから2週間程でビザが届きます。
2018年10月23日からe-VISA(インターネット申請)に切替り、簡単に申請取得することができるようになりました。申請代金は2,700円です。
e-VISAについて:駐日イランイスラム大使館
申請サイト:Application Register
アライバルビザ
各国際空港(テヘラン、タブリーズ、マシュハド、シーラーズ、イスファハン)に到着してから申請取得するタイプのビザです。空路入国者のみ申請可能で、こちらも30日間滞在可能です。取得申請が早いというメリットがありますが、事前発行のe-VISAより値段が弾みます。
(手数料:60€)+(保険料:14€)= 計74€
保険料についてですが、外国人旅行者は”海外旅行傷害保険”に加入する義務があるため、未加入者はその場で加入手続きを行う必要があります。支払いは、原則ユーロ・米ドルの現金支払いですが、大きいお釣りは「手持ちがない」と言われることもあるため、できるだけぴったりの現金を用意しておきましょう。
アライバルビザの詳しい申請方法は「イラン入国時のアライバルビザ申請方法(リーマントラベラー東松)」をご参照ください。
【重要】アメリカ渡航への影響
結論から言うと、イラン渡航者はアメリカのビザ取得が面倒になります。
日本は米国の「ビザ免除プログラム(以下、VWP)」加盟国であり、電子渡航承認システム(以下、ESTA)で入国することができます。
VWPとは、対象国であればビザなしで米国に90日以下の滞在が可能となるプログラムです。
しかし、イランの渡航歴がある場合はESTAが発行されず、「観光ビザ」を取得しなければなりません。実際に、駐日米国大使館・領事館の公式サイトを確認すると、以下の記載があります。
(※)ESTA申請ができない人
- 2011年3月1日以降にイラク、イラン、スーダン、シリア、リビア、ソマリア、イエメンに渡航歴のある人(公務訪問等の例外あり)
このような条件が米国側から強いられていますが、2019年3月からイランのビザはパスポート貼付ではなくA4サイズの別紙に印刷され、出入国スタンプは押されなくなりました。つまり、表面上はイラン渡航歴が残らないということです。
このことから、イランに行った後でもESTAの申請ができるという説が他の旅行ブログで散見されています。
しかし私は、これに対して懐疑的です。と言うのも、渡航歴の詐称がバレた場合のリスクが大きく、また成功体験を聞いたことがないからです。個人としては、大人しく観光ビザを申請取得する事をオススメします。
2. 費用や決済はどうなってるの?
イランは現在も経済が不安定な状況が続いています。私の旅行費用を参考値として紹介しますと、三週間7都市の周遊で400$で足りました。勿論、宿泊費・食費・移動費・お土産代等を全て合算しています。
全行程は個人で組み、移動は高速バスVIP、宿はホステル(5〜8€/泊)を利用していました。
イランの通貨単位
通貨単位はイラン・リアル(Rls、IRR)です。
紙幣:10万Rls、5万Rls、2万Rls、1万Rls、 5000Rls、2000Rls、1000Rls、500Rls
硬貨:2000Rls、1000Rls、500Rls、250Rls
実際はほとんど、紙幣を利用することになります。10万Rls、5万Rls、2万Rls、1万Rls、 5000Rlsを覚えておけば良いでしょう。
しかし日常生活においては、リアルではなくトマン(1トマン=10Rls)という単位を用います。リアルの場合、桁が大きいので現地の人々も混乱しているようです。旅行者であれば尚更です。私は何度も「リアル?トマン?」と聞き返していました(笑)。
そして、数字の読み方も覚えておきましょう。
例 | 読み方 |
100,000Rls → 10,000トマン | ten thousand (toman) トマンは発音しない場合が多い |
5,000,000Rls → 500,000トマン | five hundred (thousand toman) 千以下は省略する場合が多い |
現金両替については、「イラン旅行に役立つアプリ6選」をご参照ください。
クレジットカード・キャッシュカード事情
国際カードブランドのVisa・Mastercard・American Express等はアメリカの企業のため、ほとんどの店やホテルでは使うことができません。ただし、イラン国外に会社を持っている宿の場合、ホステルなどでもカード決済をすることが可能なケースも多少あります。
また、イラン国内専用キャッシュカードを、空港で手に入れることもできます。因みに、キャッシュカードの購入は1000円も掛かりません。悪徳業者に高値で売りつけられた旅行者が多数いますので、くれぐれも気をつけましょう。
よって基本的に、旅行期間中はほぼ全てを現金でやり取りする前提で考えておけば、間違いありません。
3. イラン国内の移動手段はどれがオススメ?
飛行機
国内線の飛行機移動は、外国人の場合ほぼ不可能です。
どうしても飛行機でなければダメだという場合は、ぼったくり覚悟で現地の旅行代理店で予約購入してもらいましょう。
以下、私自身の体験談ですので参考にして下さい。
旅行会社に航空チケットを予約してもらい、現金の持ち合わせがなかったため「じゃあ、明日USDで払いますね。」で合意しました。ところが次の日訪れると「いやー、スタッフの間違いだったんだけど、実はUSDじゃなくて、EURなんだよね。ほんとごめんよ。」の一言・・・。旅程が押していたため仕方なく差額分も払いましたが、足元を見られた形になってしまいました。
苦い体験ですが、どんな形であれ契約する際は、その場でしっかり完結させましょう。
後日談ですが、レビューを書こうと思い、息巻いて探した所、インターネット上には情報を一切載せていない旅行会社でした。「やるなイラン!」と思った瞬間です。
長距離バス
都市移動は長距離バスをオススメします。イランは原油採取国でガソリンが安く、格安の運賃で乗車できるからです。実際、VIP座席でも400~500kmの距離を5~7$程度で乗車できるので、移動中も快適に寝ることができます。また、軽食やトイレ休憩もしっかりとあるので、意外な程に快適な旅ができます。
「バスが止まって30分の休憩になったら、チャイ(お茶)に砂糖をいっぱいいれて飲む!」、これがイラン人になりきる近道です。
配車アプリ – Snapp
イランは、配車タクシーが充実しています。私はバスターミナルから宿に向かう時や、郊外の観光地に向かう際に利用していました。乗り合いすればもっと安くなるので、さらにお得に移動することができます。
4. インターネットが使えないって本当?
イランのネット自由度は世界でワースト2位です。もちろん、ネット環境は整備されていますが、どこ行っても電波は弱いですし、政府がインターネットのアクセス制限・検閲をかけているため、正直不自由です。
電波の強さはどうすることもできませんが、政府によるアクセス制限・検閲を掻い潜る方法はあります。
それは、VPNと呼ばれる仮装プライベートネットワーク(Virtual Private Network)を利用することです。このネットワークを使うことで、政府の制限や検閲を潜り抜けて、自由にサイトが閲覧できちゃいます。
VPNアプリは非常に多くの種類がありますが、私は「セカイVPN」をオススメします。理由は、実際使っていて非常に電波が良く、複数端末を同時使用しても問題なかったからです。
また、このVPN一番のメリットは登録後2ヶ月間無料使用できる点にあります。渡航前に必ずVPNを使える設定にしておきましょう。詳しい設定方法は「中国・イラン渡航者なら誰でも知ってるVPN」を参照してください。
5. 宿泊先はどうやって決めれば良いか?
イランの宿泊で気をつけておくべきことは、2点あります。
「Booking.com」が利用できません
インターネットの制限により、検索しても0件としか表示されませんので、他の宿サイトを利用しましょう。私の経験では「Hostelworld」が一番掲載数が多く利用しやすかったです。安宿〜A級クラスまで網羅されていますので、これ一つで宿情報は十分収集できました。
ネット決済ができません
理由は上述した通り、イランではほとんどの店や宿で、クレジットカードが使用できないからです。宿代は基本現金払いなので、両替金額は十分注意しましょう。
民泊アプリ、Couch Surfingがイランでは人気
ホテルやドミトリー以外に、民泊という手段もあります。
公式では外国人旅行者が民泊することは”違法”ではありますが、世界各国で利用されている「カウチサーフィン(Couch Surfing)」という民泊アプリを使っている旅行者/現地人がかなり多いです。
イランは意外にもカウチサーフィンの登録者数が多く、宿泊オファーが大量に届くのは当たり前です。みなさんとても親切にしてくれますが、無論良くない輩がいることもあるので、利用する際は十分に気をつけましょう。
また、Couch Surfingの利用にはVPNが必要となります。
6. 旅行者が意識するべきイスラム教の戒律ってどんなの?
イランは宗教国家ですので、その他の中東各国よりも厳格です。イスラム教の戒律に沿った振る舞いを心がけてください。街中ではギャップを感じる現地人も見かけますが、私たちはあくまでも外国人です。イランに限らない話ですが、リスペクトの態度が不可欠です。
まずはペルシャ数字に慣れよう
イランではペルシャ数字を用いています。私たちが日頃使っている西洋数字(0,1,2,3,…)と全く異なるため、必ず混乱します。レストランの会計や、バスのチケット購入時はすべてペルシャ数字なので、事前に覚えておくことをオススメします。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
۰Sefr | ۱Yek | ۲Do | ۳Se | ۴Cāhār | ۵Panj | ۶Şeş | ۷Haft | ۸Haşt | ۹Noh |
イラン暦の確認も忘れずに
イスラム教シーア派が大半を占めるイランは西暦ではなくイラン暦で生活しています。長距離バスや鉄道のチケットはイラン暦ですので、購入時はくれぐれもご注意を。
また金曜日は礼拝だけですが、祝日は大半のレストランや交通機関が閉まっています。渡航期間中に祝日がないか、事前に確認しておくと良いでしょう。
服装は肌の露出を控えて
肌の露出を避けるのが、原則です。
イランの女性は、ヒジャブ(スカーフ)の着用が義務化されています。また、異教徒の女性も同様にスカーフ着用をしなければならず、スカーフで髪の毛を覆い隠す必要があります。スカーフの色はそこまで気にする必要はありません。
旅行していて面白かったのが、都会と地方で服装にギャップがあったことでした。
都会の女性は色彩豊かな服装で、ゴージャスなスカーフを後頭部にふんわりと纏っている人が多く、地方に行けば行くほど露出が減り、黒単色のチャドルを着ている人が多かったです。
男性は短パンNGです。一度チェックイン時に「宿の中でも短パンで過ごさないで」と言われたこともあります。幸い私は短パンTシャツではなかったですが、このように厳格な宿もありますのでご注意を。
また、半袖Tシャツを着る場合は襟付きがマナーとされています。モスクや霊廟に入る際は、長袖を着用しましょう。
アルコールは御法度
イランは禁酒国家です。店頭販売は一切されていません。ノンアルコールビールを自称する飲料もありますが、ただの美味しいジュースでした(笑)。
因みに試すなら、上記写真の「HEY DAY」のピーチ味(写真はトロピカル味)がオススメです!
実際のところ、各家庭で自家製ワインやビールが作られているなんて話も小耳に挟みましたが、余程信頼できる相手でない限り、飲まない方がいいです。睡眠剤で嵌められて、荷物を盗まれたりする可能性はゼロではありません。英語が通じないイランでトラブルに巻き込まれたら、旅行が台無しですので、気をつけましょう。
モスクや霊廟の中に入っても大丈夫?
基本的に観光スポット化された建築であれば問題ありません。気になるようであれば、周囲に観光客がいるか観察してください。それか、そこら辺にいる現地人に身振りで尋ねてみましょう。
また、金曜日や祝日などのイスラム教徒にとって重要な日は、ズカズカと奥まで入るのを控えた方が良いでしょう。
どうしても不安な方は、入口付近にいるボランティアガイドと入るのも一つの手です。私は、宿でできた友人と一緒にガイドをつけてモスクを観光をしていました。ガイドブックには記載されていない、貴重な秘話や建築設計の裏話が聞けてとても楽しかったです。
ただし、ボランティアガイドは本当に有名なモスクぐらいしかいません。基本は入っちゃダメな場合はモスク内にいる誰かが、教えてくれます。よって私の経験談では、入る前に確認する事だけは怠らずにすれば大丈夫、というのが結論です。
むやみにカメラを向けるのはやめよう
日本とかけ離れた生活様式に心が奪われて、カメラを向けたくなる気持ちもわかります。しかし、そこはぐっとこらえて、許可なく撮影するのは控えましょう。特にイスラム教徒の女性と、政府関連建物にレンズを向ける行為は、周りに気をつけながら行いましょう。タチの悪い警察官にいちゃもんつけられて、投獄された旅行者もいるので十分注意してください。
7. 危険じゃないの?治安は?
イランの治安はとても良いです。
現在国内で「非常に危険」と指定されている地域はなく、渡航制限が出されている都市もありません。しかし、アフガニスタンとイラク国境付近は、情勢が不安定のため渡航は控えてください。(出典:駐日イランイスラム共和国大使館)
イランはホスピタリティに溢れた人ばかり
イランの人々の気質として、「ホスピタリティー」がよくあげられます。特に、旅行者に対しては、とても厚いおもてなしをします。シルクロードの通過点だったこともあり、遠い国から来た人々を歓迎する風習が今でも残っていると言われています。
日本人に似ている社会的儀礼 ”タロフ”
また、イランの人々の社会的儀礼の一つに、「タロフ(イントネーションは”カラス”と同じ)」と呼ばれる文化・習慣があります。
例えば、お店で金額を支払おうとすると、「結構ですよ」と言われることがあります。これは決して、無料でサービスを提供することを意味しません。
礼儀や敬意を表すための言葉ですので、真に受けずにお金を差し出しましょう。本音かわからず困った時は「タロフ?笑」と言うとグッと距離が近くなります。”本音”と”建前”の日本の風習とよく似てますよね。
まとめ
以上、7つの疑問にお答えしました。これで皆さんの不安が拭えたのではないでしょうか?この記事をきっかけにイランに行けるかも!と思ってくれると嬉しいです。
最後の章でも少し触れましたが、イランは日本に似ている風習がいくつもあります。あやとり遊びがあるのを知った時は、とても驚きました。また日本のテレビ番組やアニメも人気で、「おしん」や「キャプテン翼」はほとんどの人が知っています。それもそのはず、「おしん」放送当時のイラン国内最高視聴率はなんと90%ですから。
最後になりますが、現在は情勢が不安定ですので外務省の渡航情報の確認も忘れずに行いましょう。
私は親近感がわくイランが好きです。皆さんも是非、イランに行ってみてください!