日本からわずか半日!世界一寒い都市ヤクーツクへの旅(前編)

イルクーツクのマンモス

山のような仕事に忙殺される毎日。次にまとまった休みが取れたならば、絶対海外旅行に行く! と固く心に誓いながらデスクに向かう勤め人は、きっと私以外にも多くいらっしゃるでしょう。

でも、いざ長期休暇となると、行きたい場所を決められずに、結局だらだらと自宅で休みを消化してしまうことってありませんか?

特に、私のようなサラリーマンは行きたい気持ちが人一倍あったとしても、「期日までに帰って来れなかったらどうしよう」という心配が先行してしまい、最初の一歩がなかなか踏み出せないことかと思います。

ああ、なんともったいない!

旅の不安は、有益な情報が解決してくれます。情報さえあれば、これまでは想像もできなかったマイナーな国にもチャレンジする勇気が湧いてきます。

今回は、そんな好奇心と不安の狭間にいるあなたの後押しをする、とっておきの場所と情報をご紹介したいと思います。

ロシアの極東都市ヤクーツク

ヤクーツクの凍った魚

今回私がオススメしたい場所は、ロシアの極東都市ヤクーツク(Якутск, Yakutsk)です。

ヤクーツクとは一体どんなところなのでしょうか。

「あぁ、あそこね」 と、すぐにイメージを想起できた方はかなりの上級トラベラーとお見受けします。

日本の真上にある想像の斜め上の世界

ヤクーツクはロシア連邦のサハ共和国内にあり、位置的には日本の真上にあります。メルカトル図法の世界地図では左斜め上にあるように見えますが、日本時間と時差がありません。

人口は30万人程度。大都市ではありませんがインフラも整備され、十分に都市化されています。日本語表記はヤクーツクですが、ロシア語では「イクーツク」に近い発音になります。

ヤクーツクで凍りつく!

寒い夜のヤクーツク

そんなヤクーツクの最大の特徴は冬の寒さにあります。世界でも有数の寒さとなり、万年凍土の上につくられたその都市は、まさに氷の世界そのもの。

私が昨年12月に訪れた時の平均気温は、なんとマイナス40度(摂氏)! 日照時間も短く、1日を通してほぼマイナス40度が続きます。過去にはマイナス70度を記録したこともあるとか。

世界一冷蔵庫が売れない都市

家庭用の冷凍庫がマイナス15度程度ですので、試しに自宅の冷蔵庫に頭を突っ込んでみても、その寒さを想像することすら難しいでしょう。

滞在中、アイスクリームを買ったことがありましたが、買った時よりも食べる時の方が凍って固くなっていました。水も、スーパーマーケットからゲストハウスに持って帰るまでに氷と化します。

寒暖差も世界一

そんなヤクーツクですが、夏は30度まで気温が上昇します。厳しい冬を乗り越えた自然がほんの束の間息を吹き返し、都市を彩ります。

その寒暖差、なんと70度以上

ベストシーズンはいつ?

ひとときのバカンスを楽しむのであれば、ベストシーズンは間違いなく夏季(7〜9月)でしょう。

ですが、オンリーワンの体験を求めるトラベラーにオススメするのは断然、冬季(12〜2月)です。

冬のヤクーツクに向かうために準備すべきこと

私がヤクーツクへの旅行を思い立ったのは2019年10月頃。裸一貫で飛び込めるほど簡単な世界ではないということで、出発までの約2ヶ月で準備すべきことがいくつかありました。その時に感じたこと、反省点も含めて解説していきます。

服は装備。寒さに打ち勝つ防具の選び方

真っ先に気になるのが服装だと思います。マイナス40度ともなると、お洒落は我慢と意地を通せる世界では全くありません。防寒最優先で、自分を守らないといけません。

大事なのは値段じゃない

ヤクーツクでは暖かい服装

では、何を着るべきか。結論から言うと、ユニクロで大丈夫です。慌てて有名アウトドアブランドで全身を買い揃える必要は全くありません。

重要なのは、いかに肌の露出面を減らせるかということです。体のパーツごとに順に見ていきましょう。

頭部

ヤクーツクで冬に使う帽子

とにもかくにも帽子は必須です。

ニット帽やウシャンカ(俗にいうロシア帽)など、なるべく暖かく、かつ、必ず耳が覆えるものを選んでください。帽子で耳を隠せない場合は、イヤーマフラー併用がベターです。耳を露出していると数分で激痛が走り、耐えられなくなります。

ネックウォーマーも必需品になります。首から口元までを包める大きめのものがオススメ。呼吸に含まれる水分でネックウォーマーが段々と凍ってきますので、毛先の長いウールなどはチクチクとして痛くなってきます。短いものを選びましょう。

上半身

インナーを重ね着し、さらにアウターも重ね着することで防寒性を高めます。私は上下ともに通常のヒートテックと極暖のものを重ねて着用していました。

アウターについても、薄手のダウンジャケットに防水・防風性能のあるジャケットを重ねて対応しました。

3枚以上の重ね着も効果は上がりますが、屋内施設は例外なく暖房がガンガン効いていますので、脱着しやすいアウターで調整した方が無難です。脱げないインナーを着すぎると、汗だくで食事をするハメになります。

末端となる手足の保護も不可欠です。細かい作業は難しくなりますが、手袋は出来る限り分厚いもので、用事がない時はポケットに手を突っ込んでおきましょう。

カメラ撮影のために手袋を外すと、間もなく激しい痛みが襲ってきます。撮影は刻んで行いましょう。痛みは細胞が壊死してしまう一歩手前みたいなので、我慢は危険です。

下半身

上半身と同じくタイツの重ね着に、風を通さない素材のパンツを履きました。

靴下も、薄手と厚手のものを重ねて、足先が冷えないように心がけました。

ただし、あまりに分厚い靴下を何枚も履くと靴が入らなくなりますので、靴のサイズと相談になります。

当然、路面は凍結していますので、ソールはグリップ力のあるものが◎です。

ヤクーツクの冬に必須の靴、ヴァレンキ

画像提供:Andrey

現地ではヴァレンキ(Валенки,Valenki)と呼ばれる靴の上から履く毛皮の靴が有名で、履いているローカルもそこそこ見かけましたが、街歩きにそこまでは必要ないというのが実感です。

ヴァレンキはお土産としても人気なので、気に入れば購入しても良いかもしれません。

ロシアを楽しむためのロシア語のすゝめ

ロシア語入門

ヤクーツクでは、英語がほとんど通じません。

ロシア語とサハ語が広く話されており、標識や看板は基本的に全てロシア語です。旅行中に英語が通じたのは、航空会社のデスクと最終日に宿泊したホテルフロントだけでした。

「海外旅行と英語が話せないのは無関係」でも紹介されていますが、モスクワなど都市部を除けば、ロシアでは驚くほど英語は使われていないのです。

ロシア語を話せないとどうなる?

例えば、ホテルにチェックインできるでしょうか? 答えは「できます」。日本語の予約確認書を提示してみて下さい。スタッフは見慣れた確認書を手に、すぐに手続きしてくれるでしょう。

道を尋ねることができるでしょうか? 答えは「Yes」です。 Googleマップを見せて目的地を指差してみてください。親切な人か、Googleの自動音声があなたを案内してくれます。

では、カフェでコーヒーを頼むことはできるでしょうか? 答えは「Да」です。ロシアでもコーヒーで通じます。

このように、ロシア語が話せなくても不自由なく旅行を楽しむことができます。これはヤクーツクに限らず、言葉が通じない国全般に言える事です。

じゃあロシア語は不要?

結論から言うと必要はありませんが、旅行前のほんの少しの準備だけで、旅行はもっと楽しくなります。

では、何をするべきか。

私がオススメするのは、キリル文字の暗記です。ロシア語の表記にはキリル文字が使われています。表音文字のため、ラテン文字との対応を覚えておくと、およその発音が可能になります。

【キリル – ラテン文字対応表】

キリル文字とラテン文字の対応表

対応が分かるとロシア語が読める!

ヤクーツクの公園

例えば、これは何の施設でしょうか。”ПAРK”と大きく書かれています。

これを対応表で置換していくと、П→P、A→A、Р→R、K→Kになり、答えは”PARK”(公園)となります。

前後の文字やアクセントの位置で発音が変わることもありますが、それを気にするのは文字を覚えてからで十分です。声に出せなくても、読むことさえできれば地図で通りの名前を確認したり、レストランのメニューもどんなラインナップか理解できたりしますので、独り途方に暮れる場面がかなり減ります。

キリル文字は分けて覚えよう

一度に全て覚えるのは大変です。文字をグループ分けしてみましょう。先程のПAРKを例にとると、

  • グループ1:アルファベットに存在し発音も同じもの A,K
  • グループ2:アルファベットに存在しないもの П
  • グループ3:アルファベットに存在するものの発音が異なるもの Р

の3つのグループに分類することができます。

グループ1はアルファベットと同じなので敢えて覚える必要はありません。

グループ2は見慣れないので、かえって覚えやすいと思います。

まず頑張って覚えるべきは、グループ37文字(В,Е,Н,Р,С,У,Х)になります。ついつい英語と混同しがちなものを暗記するだけで、推測できる単語がかなり増えます。

よって、全部記憶するのが難しい場合は、グループ3→2→1の順で覚えるようにしましょう。

※この分類は私が考えたもので、学術的に正しいものではございませんのでご注意下さい。

役立つ一言露会話

キリル文字を一通り覚えたら、後は簡単なフレーズを用意するだけです。これだけ言えれば十分にヤクーツクを満喫できます。

  • Здравствуйте!(ズドゥラーストヴィチェ) こんにちは!
  • Спасибо!(スパシィーバ) ありがとう!
  • Хорошо!(ハラショー) いいね!
  • Очень приятно!(オーチンプリヤートナ) よろしく!
  • Да! / Нет!(ダー/ニェット) はい!/いいえ!
  • Да свидания!(ダ スヴィダーニャ) さようなら!
  • Я люблю тебя!(ヤ リュブリュー ティビャ) 愛してます! 

ポジティブなことを言おうとしているのか、ネガティブなことなのかは表情で相手に伝わります。何よりも大切なことは、笑顔で話しかけることです!

ヤクーツクのデータ通信事情

インターネット環境は非常に良好です。圏外になる場所はありませんでした。Wi-Fiも発達しています。滞在したゲストハウス、ホテルはもちろん、ほぼ全てのレストランで利用できます。

SIMカードは必要?

あって困ることはありませんが、なくても困らないというのが正直な感想です。

というのも、寒さゆえに外で長時間スマホを使うことができないからです。

ポケットから取り出すと、みるみるバッテリーがなくなっていき、画面タッチも反応しなくなります。同時に、結露により故障の原因にもなります。調子に乗って写真撮影をしすぎたせいで、私のスマホはスピーカーから音が出なくなり、今も後遺症に苦しんでいます。

SIMカードの入手方法

市内の商業施設にはMegafon、Beeline、MTSといった大手通信会社が出店していますので、すぐに現地調達できます。ローカルに聞いた話では、ヤクーツクでのオススメはMegafonとのこと。

また、日本から現地のSIMカードを買っていく方法もあります。私はAmazonで入手しました。購入したSIMカードはこちら。価格も現地と同じくらいですし、問題なく動作しました。

日本ではおなじみのあのアプリが使えない

ロシアでは政府規制によりLINEが使用できません。日頃、LINEでメッセージをやりとりしている方は要注意です。

解決方法はあります。VPNアプリを介せば使用できるので、日本でインストールしてから行くと安心です。下のリンクから、私が実際に使用したVPNアプリが無料ダウンロードできるので、是非使って下さい。

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ヤクーツクでの支払決済

続いてはお金の話になります。通貨はロシアルーブル(RUB)です。

ロシアの通過はルーブル

日本円の両替はヤクーツクでは不可

現地では空港、市中銀行ともに日本円からルーブルへの両替は受け付けてもらえません。

レートは良くありませんが、日本国内で両替しておくことをオススメします。日本円をドルやユーロに両替して現地でルーブルに両替する手段もありますが、手数料を勘案すると有利にはなりません。

また、日本においてロシアルーブルは流通量が少ないため、帰国後の逆両替(RUB→円)はレートが非常に悪くなります。

余った現金は次回の旅にとっておくか、将来のルーブル高を期待してタンス預金しておくのが賢明です。

クレジットカードはどこでも使える

クレジット決済は日本以上に普及しています。ヤクーツク市内のほぼ全ての商業施設で利用可能です。

そして、クレジット決済において適用される為替レートの方が、現金の両替レートよりも圧倒的に良いです。

現金とクレジットカード、どちらがお得?

レートを考えると、クレジットカードがお得です。

日本での感覚と違い、現地では高額の買い物でなくても、パン1つの買い物からガンガンカードを使っています。遠慮せず使いましょう。

とはいえ、現金が必要な場面もあります。個人のタクシーや飲食店での支払いは現金が中心になります。私の感覚では、1週間程度の観光であれば、1万円(5,000RUB)で足ります。

利用シーンカード現金相場等(RUB)
タクシー市内:100〜300
宿泊施設ホテル:5,000〜 ゲストハウス:2,000〜
スーパーマーケット水:30 パン:50 タバコ:100〜200
レストラン・カフェコーヒー:200 ランチ:300〜 ディナー:500〜
個人商店×※高額紙幣は断られる可能性有

ビザ申請

2020年4月現在、日本人がロシアへ渡航するためにはビザが必要になります。

手続きは個人で行うか、ビザ発行の代行会社に依頼する方法があります。代行だと手数料が発生することから、私は個人で行いました。

ロシアのビザ申請は手順を理解すれば誰でも簡単に手続きできます。詳しくは「【関西在住者必見】ロシアビザを自分で申請!」にて解説します。

ここまで、ヤクーツクへの旅行に必要な準備を見てきました。次はいよいよ出発編です。

本編の後編はこちらから。

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